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原口徹先生の思い出

  • family
  • 2020年4月26日
  • 読了時間: 4分

                                    上部元義  『一緒に登ってみない。』  原口先生はそういたずらっぽくおっしゃって牧師室の天井の扉を開け、梯子を引き出し て登り、竣工したばかりの教会堂の塔に私を案内してくださいました。塔からは若松の街 並みが遠くまで一望できました。『鐘は、消防団から不要になったものをいただいたんで 、鳴らせないんだよねえ。もし、鳴らしたら火事と間違えられて大騒ぎになるかもしれな いからね。』と笑いながらもちょっと残念そうに教えてくださいました。  原口先生は、宣教百周年を迎えて間もない若松バプテスト教会の牧師として、三十代半 ばで東京世田谷の教会より招聘されました。先生も奥様の悦子先生もお二人とも気さくで 柔和なお人柄で教会員や関係の方々、付属の神愛幼稚園の先生方や園児、父兄の皆さんと すぐに打ち解けられました。私の父母ともに教会員で、父は先生の招聘に携わった一人だ ったこともあってか、私たち家族のことも気にかけていただきました。私は東京での勤め を辞めて若松に戻り、祖父が創業し父が経営する現在の会社に入ってまだ数年目の頃でし た。独身だった私に先生は『どういうタイプの女性が好みなの?』と尋ねられ、ご自身の 女性観、結婚観をお話いただいたことも楽しい思い出です。その後、結婚が決まり、教会 で原口先生に結婚式の司式をしていただきました。神愛幼稚園では園長先生として、二人 の息子たちも大変お世話になりました。  原口先生は、宗教・哲学はもとより博学多才な方でしたが、私の会社の石油製品の加エ 販売、潤滑油類の再生、損保代理店といった事業內容にも理解を示され、引立てていただ きました。『こういう人が仕事を探しているんだけどどう?』と、就職の相談にこられた 方の中から当社に推薦していただいたことが何度もありました。先生のご紹介で入社した 社員は四名、皆さん社業に貢献され、今もおニ人が、現役で活躍中です。中東情勢が緊迫 化した際などは、私に元売り会社の動きやガソリン市況の見通しをお尋ねになり、先生は 欧米と中東諸国の動向について歴史を踏まえたお考えをお話しくださいました。国際石油 資本についてもとてもお詳しく、戦略物資としての石油の重要性を先生から却って教えて いただいたような気がします。神愛幼稚園創立五十周年記念事業の新園舎建設の際には、 太陽光発電の導入も検討なさいました。私も先生から出された宿題を取引先の出来たての 太陽光発電事業部(現ソーラーフロンティア)に相談し提出いたしましたが、結局床暖房 システムが採用されました。新本部園舎完成の際、『今日、お母さんたちの中に、屋根の 傾斜が普通と逆じゃないですかって聞く人がいたんだけど、実はその通りでね。今回は見 送ったけど、将来的には太陽光の発電パネルを置いて効率よく発電できるような屋根の傾 斜にしたんだよ。』と、私に種明かしをしてくださいました。さすがは原口先生と大変感 心したのを憶えています。先生のご遺志によって、昨年八月、太陽光発電設備が神愛幼稚 園創立六五周年の記念事業としてその屋根に完成いたしました。  原口先生が若松教会を離任なさることがわかったのは、二〇〇七年にはいってからでし た。私は大変ショックを受け、大いに慌てました。先生にはバプテスマの決心をお伝えし 、祈祷会で聖書を学びながら信仰告白を書き上げ、五月二七日、原口先生の若松教会での 最後の礼拝式で洗礼を授けていただきました。本当にこの時ほど心の底からの喜びに溢れ 、うれしかったことはありません。  原口先生はご自分の病気と闘われながら、教会や幼稚園の課題の解決に心血を注がれま した。先生は身を以ってご自身の信仰を私たちにお示しになりました。召天される前年の クリスマス前、最後にお目にかかった際も、私の取るに足らない悩みや愚痴を聞いて頂き アドパイスをしてくださいましたが、先生ご自身の病状を語られることはありませんでし た。今、思い起こしても言葉がありません。  原口徹先生は私にとって、牧師であるとともに尊敬する人生の先輩であり、そして、兄 のような方でした。こうして振り返ってみても原口先生の思い出は書き尽くせません。私 たち家族にとっても懐かしい思い出をたくさんいただきました。私のような信仰の薄いも のを導いてくださり、今も感謝の気持ちでいっぱいです。本当にお世話になりました。あ りがとうございました。

 
 
 

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